大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和63年(行ツ)114号 判決

大阪府八尾市南本町八丁目四番四五号

上告人

河内アルミニウム工業株式会社

右代表者代表取締役

隅田啓生

右訴訟代理人弁理士

北村修

香川県丸亀市港町一四七番地一

被上告人

四国化成工業株式会社

右代表者代表取締役

赤澤淳

右訴訟代理人弁護士

寵池宗平

白川好晴

右当事者間の東京高等裁判所昭和六一年(行ケ)第二二七号審決取消請求事件について、同裁判所が昭和六三年三月二九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人北村修の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立つて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 香川保一 裁判官 牧圭次 裁判官 島谷六郎 裁判官 藤島昭 裁判官 奥野久之)

(昭和六三年(行ツ)第一一四号 上告人河内アルミニウム工業株式会社)

上告代理人北村修の上告理由

上告人の上告理由は審理不尽、理由不備よりなるが、上告理由の説明を容易にするために、まず、「上告に至るまでの経緯」及び「本判決の要旨」について言及した後上告理由につき詳述する。

第一 上告に至るまでの経緯

本件は、上告人の「伸縮揺動自在な門扉」に関する登録一五三七二六七号実用新案(以下「本件考案」という)についてなされた、被上告人の登録無効審判(以下「本件審判」という)請求に対する特許庁の無効審決の取消請求上告事件である。

本件上告に至るまでの経緯を簡単に述べると次の通りである。

(一) 上告人の本件考案は昭和五九年三月二一日に設定登録がなされた。

(二) 被上告人は昭和六〇年一月二九日、上告人を被請求人として、出願公告の決定の謄本の送達前にした補正(以下「本件補正」という)が願書に添付の明細書の要旨を変更するので、その出願日は右補正について手続補正書を提出した日に繰り下げられるべきであるとの理由に基く無効理由により、登録無効の審判を請求した。

(三) 審理の結果、昭和六一年七月三日、「登録第一五三七二六七号実用新案の登録を無効にする。」との審決(以下「本件審決」という)があった。

(四) 上告人は本件審決を不服とし、昭和六一年八月二一日、東京高等裁判所に対し本件審決の取消請求訴訟(以下「原審」という)を提起した。

(五) 審理の結果、本件補正は、本件考案の願書に添付された明細書(以下これを「本件最先明細書」を略称する)の要旨を変更すると認定し「原件補正は、本件考案の願書に添付された明細書の要旨を変更すると認定し「原告の請求を棄却する」との判決(以下「本判決」という)がなされた。

第二 本判決の要旨

本判決を要約すると以下のとおりである。

一、原審本判決の要旨を記すと次のとおりである。

本件原審判決は、

(一) まず、第一段階で、「目的」の記載に関して

(ⅰ)「本件考案の願書に最初に添付した明細書に記載された考案においては、門扉のヒンジ部における枢支ビンが、受具とヒンジに対し挿抜自在に嵌挿された構造を採用することに関する目的はなかったというべきである。」(判決第二五丁裏第二乃至第五行目)と明細書に記載の考案の目的を指摘し、

(二) 次に、第二段段階で、「挿抜自在」の記載について

(ⅱ)「枢支連結の部分においては、門扉のヒンジ6、6は、支柱に埋設された受具8、8に対して回動自在であることのみが要求され、それ以外に、受具8、8に対して上下に動く機能は求められていないというべきである。」

(判決第三一丁表第四乃至第七行目)

とし、さらに

(ⅲ)「また、本件考案の願書に最初に添付した図面の第1図、第2図に示された枢支連結の部分においては、ヒンジ6、6と受具8、8に対して枢支ビンが貫通した状態で嵌挿された構造が示されているだけであって、枢支ビンが挿抜自在であるという構成を読み取ることはできない。」

(判決第三一丁表第八乃至同裏第一行目)

と判断し、以って

(ⅳ)「本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面(この図面を以下で「本件最先図面」と略称する)には、ヒンジと受具の両者を貫く状態で嵌挿された枢支ビンについて、ヒンジ及び受具に枢支連結して縦軸芯周りに回動自在となす機能を有することのみが示され、枢支ビンが挿抜自在となっていることに関しては、何も示されていないというべぎである。」

(判決第三一丁裏第五乃至第一〇行目)

と判示されたものである。

(三) また、第三段階として、上告人の「枢支ビンが挿抜自在なヒンジ部の形状は、昭和四八年実用新案出願公開第一一四五三九号公報(甲第四号証)と昭和四七年実用新案出願公開第一八三三二号公報(甲第五号証)にも記載されていて、この構造は広く知られていたところである」との主張に対しては

(ⅴ)「原告がこの主張の根拠として述べる右各公報の記載は、これらの公報に係る考案についての構成に関するものにすぎず、右各公報に、原告主張のような構成が記載されているからといって、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面に、枢支ピンが挿抜自在なヒンジ部の形状が記載されていたということはできない。」

(判決第三二丁表第五乃至第一〇行目)

と判示し、

(四) さらに、第四段階として、上告人の「門扉を、縦軸芯周りに回動自在に枢支連結する場合、受具とヒンジとの重なり部分に貫通孔を設け、頭付きピンを上方から貫通装着して用いることが古くから行われており、ピンが二つの部品に対して挿抜自在に構成されて、分解掃除並びに補修が容易であるように、ピン継手が作られていることが、当業者の技術常識である」との主張に対しては、

(ⅵ)「原告主張の右の点が、当業者の技術常識であることを認めるに足りる証拠はない」。

(判決第三二丁裏末尾二行目)

と判断し、続けて

(ⅶ)「なお、原告主張の右の点が技術常識に属する事項でないとしても、少なくとも周知の技術に属する事項であったかもしれないが、この事項を明細書及び図面の記載から自明のものとして読み取ることができるかについては、発明の目的との関連においてこの点を判断するべきである。」

(判決第三三丁第一乃至第五行目)

と判断し、以って

(ⅷ)「本件補正後における本件考案の目的等と、前記2で判示した、願書に最初に添付した明細書及び図面に示される本件考案の出願考案の出願当初の目的等を対比し、前記(1)で判断したところを併せみると、たとえ、原告主張の点が当業者において周知の技術であったとしても、枢支ピンが挿抜自在なヒンジ部との構成が、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載から自明であったと認めることはできない。」

(判決第三四丁表第三乃至第一〇行目)

と最終的に判決されたものである。

二、次に本判決がその結論に言及する為に理由を累々述べられているので、それぞれの判決理由の審理不尽、理由不備の違法を後段で明らかにする為に、判決理由の要点を箇条書にすると次の通りである。

〔一〕 1 序論

原告は、審決が「本件補正により補正された明細書の登録請求の範囲には、

〔1〕 『ヒンジ6並びに前記受具8の両者を貫く状態で挿抜自在に嵌挿された頭付きピンから成る枢支ピン19』

なる構成が記載されているが、

〔2〕 この点については、本件考察の願書に最初に添付された明細書及び図面には何ら記載されていず、

〔3〕 また、そのような技術内容を示唆する記載もない。

〔4〕 さらに、その点については、当時の技術水準からみても自明のことであるとは認められない。」

〔5〕 とした認定、判断は誤りであり、かつ、この点についての審決の判断には審理不尽、理由不備の違法があると主張するので、その主張の当否について以下検討する。

〔二〕 2 本件考案の目的

〔1〕 (1) 原本の存在とその成立に争いのない甲第九号証(明細書及び図面を添付した本件考案の願書写)によると、本件考案の願書に最初に添付した明細書には、次のような記載のあることが認められる。

〔11〕 「本件考案はモータープール等の出入口に設けるところの伸縮揺動自在な門扉に関するものである。

モータープール等大きな間口を必要とする門での門扉としてその間口の幅に相当する長さを有した格子状の扉があるが、この扉を収納する場合、モータープール内に回動させての収納作業を行わねばならず、この回動空間内に他物の存在を許さないもので大なるスペースを必要とする不合理なものであった。

また、この扉を回動せずに長さ方向に移動して収納する場合にあっても、その扉の長さ分を収納し得る空間をモータープール外側に設けねばならないもので、いずれにしても不合理なものであった。

この点にあって本考案はかかる門扉をパンタグラフ機構で大きく伸縮自在となし、収縮時にあってはその収縮長の小半径で回動しての収納を可能となして、大なる間口の閉塞を行うと共に、この扉の収納時の占有空間を極めて小さくし且つ間口を狭くしない場所での収納を可能となして、大きな間口の開閉における極めて合理的な解決をなさんとするものである。」

(第一頁第一六行ないし第二頁一八行)

この記載によると、本件考案の願書に最初に添付した明細書に記載されていた本件考案の目的に関して、次の〈1〉及び〈2〉の点を認めることができる。

〔12〕 〈1〉 モータープール等大きな間口を必要とする門扉は、その間口の幅に相当する長さを有する格子状のものを用いていた。しかし、門扉を収納する場合、モータープール内に回動させるため、この回動空間内に他物の存在を許さない大きなスペースを必要とし、また、門扉を回動させないで長さ方向に移動して収納する場合には、この扉の長さ分を収納し得る空間をモータープール外側に設けなければならないといった問題点があった。

〔13〕 〈2〉 本件考案の願書に最初に添付した明細書に記載された考案は、右〈1〉の問題点にかんがみ、門扉を伸縮自在となし、門扉を収縮し、収縮した長さの小さい半径で回動させて収納し、間口狭めないで収納することを目的とする。

〔14〕 そして、前掲甲九号証によると、本件考案の願書に最初に添付した明細書には、右の各点以外に本件考案の目的に関する記載はないことが認められる。

〔15〕 そうすると、本件考案の願書に最初に添付した明細書に記載された考案においては、門扉のヒンジ部における枢支ピンが、受具とヒンジに対し挿抜自在に嵌挿された構造を採用することに関する目的はなかったというべきである。

〔2〕 (2) 原告は、「本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面には、二次元方向滑動自在の接地キャスターが記載されており、これはレールの使用になじまないし、右明細書及び図面には、接地キャスターを載置転動させるレールが示れていないから、右接地キャスターは、地面に接着させて用いるものであることが規定されていたものである。そして、モータープール等の入口に設けられる門扉の接地キャスターの移動範囲は二次元面において非常に広いから、地面を正しく水平面に仕上げることは困難であり、高価なものとなる。したがって、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面には、接地キャスターが門扉操作中に上下に動くことが可能でなければならないという目的が示されていた」旨主張する。

〔21〕 しかしながら、前掲甲第九号証によると、本件考案の願書に最初に添付した明細書の第三頁第一二行ないし第一六行に、「この門扉1の伸縮端としての他端側の縦長部材2にはこれと平行に外方に支持部材9を連結し、この支持部材9の下端に二次元方向滑動自在なキャスター10を取付けている。」と記載されていることが認められる。

この記載によると、接地キャスター(キャスター10)は、二次元方向すなわち面の上において滑動自在なものとされていて、接地キャスターが、上下にも移動することが自在であることは示されていないというべきである。

また、門扉が設けられる地面が水平であるか否かについての記載は、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面に存在しないことが、前掲甲第九号証によって認められる。

〔22〕 したがって、原告が主張するように、地面を正しく水平面に仕上げることは困難であり、高価なものとなるとしても、そのことをもって、右明細書及び図面に、接地キャスターが門扉操作中に上下に動くことが可能でなければならないという目的が示されていたとする根拠とすることはできない。

〔三〕 3 願書に最初に添付した明細書の記載

〔1〕 (1) 前掲甲第九号証によれば、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面には、次の〈1〉ないし〈3〉の記載があることが認められる。

〔11〕 〈1〉 「一定長の複数本の縦長部材2・・をその各部材2・・の長さ方向を上下方向に位置し、各部材2を平行に氷平横方向直線状に配置すると共に、この各部材2・・を斜行した複数の連結杆3からなるパンタグラフ機構4で枢支連結して、縦長部材2・・を横方向伸縮自在となり、またこの門扉1の横方向一端側の縦長部材2にはこれに平行に支持部材5を連結すると共にこの支持部材5に上下二個設けたヒンジ6、6を固定部7として間口の端部に設けてある支柱に埋設の受具8、8に回動自在に枢支連結し、他方この門扉1の伸縮端としての他端側の縦長部材2にはこれと平行に外方に支持部材9を連結し、この支持部材9の下端に二次元方向滑動自在なキャスター10を取付けている。またこの門扉1の横方向中央位置の縦長部材2の下端にもキャスター10を取付けて、前記端部下端に取付けたキャスター10と共に接地している。」(第三頁第二行ないし末行)

〔12〕 〈2〉 「この構成に於ける伸縮自在な門扉1によると、横方向一杯に伸長させての門閉塞が行え、次に収縮時には、伸長状態にある伸縮端部を縮小方向に押し操作し、キャスター10、10を滑動させて、パンタグラフ機構4を収縮作動し、隣合う縦長部材2・・が接触する程度まで収縮し、その次にこの横方向長さの短い状態の門扉1を固定部7として支柱を中心に回動してゆき、間口全体を開放するものである。

この場合、収縮して後の回動はその半径が極小となっているので回動に必要な空間小さくて良く、従ってそれ以外のスペースを非常に大ならしめ得る利点を有している。また、小半径の回動なので、作業者が押し又は引き操作によって行うものであれば移動量が少なくして良いものである。」(第五頁第五行ないし末行)

〔13〕 〈3〉 「以上要するに本考案の伸縮揺動可能な門扉はアルミ合金の押出しまたは引抜き製による一定長さの複数本の縦長部材2・・をパンタグラフ機構4を介して横側方向並置連結して横側方向に伸縮自在な門扉1を形成し、この門扉1の横側方一端側の縦長部材2をヒンジ6、6を介して支柱等の固定部7に枢支連結して縦軸芯周りに回動自在になすと共に、この門扉1の少なくとも伸縮端側部分の下端に接地キャスター10を敷設してあるが故に、伸張状態での大なる間口の門の閉塞が行え、収縮しての回動によって小なる半径でのスペースでの小さな回動作業が行えると共に収納時にも小なるスペースでの収納状熊が達成し得るに至った。

即ち考案は伸縮と回動とによる二操作によって大なる間口の門の閉塞ができ且つ小なるスペースでの収納がなし得、更に収納作業時での必要なスペースを極めて少なくして、他物の邪魔をすることを非常にすくなくなし得るに至ったのである。」(第六頁第一行ないし末行)

〔2〕 (2) これらの記載からすると、本件考案の願書に最初に添付した明細書には、次の〈1〉、〈2〉の点が記載されていると読み取ることができる。

〔21〕 〈1〉 一定長さの複数本の縦長部材2・・をパンタグラフ機構4を介して、横側方向に並置連結して横側方向に伸縮自在な門扉1を形成したこと。門扉1の横側方一端側の縦長部材2には、これに平行に支持部材5を連結するとともに、この支持部材5にヒンジ6、6を上下二個設けたこと。固定部7として間口の端部に設けてある支柱に埋設してある受具8、8にヒンジ6、6を枢支連結して縦軸芯周りに回動自在となしたこと。門扉1の他端側の縦長部材2には、これと平行に外方に支持部材9を連結したこと。支持部材9の下端に、二次元方向の滑動が自在なキャスター10を取付、また、門扉1の横方向中央位置の縦長部材の下端にも同様のキャスター10を取付けて、両キャスター10、10を接地させること。キャスター10は、支持部材9のキャスター10のみでもよいこと。

〔22〕 〈2〉 門扉1の開閉に際し、キャスター10を滑動させて伸縮自在な門扉の伸縮操作を行うこと。門扉1の収納に際しては、パンタグラフ機構4を収縮作動し、隣り合う縦長部材2、2が接触する程度まで収縮させ、次いで、キャスター10を滑動させることによって、横方向長さの短くなった門扉を支柱の周りに回動させる操作を行い、間口全体を開放させること。

〔四〕 4 願書に最初に添付した図面の記載

〔1〕 前掲甲第九号証によると、

〔11〕 本件考案の願書に最初に添付した図面の第1図には、伸張状態にある門扉1が記載され、第2図には、収縮状態にある門扉1が記載されていることが認められる。

〔12〕 右第1図及び第2図には、枢支連結の部分において、ヒンジ6、6と受具8、8を貫通して枢支ピンが嵌挿していることが記載されている。

〔五〕 5 「挿抜自在」の記載について

〔1〕 (1) 本件考案の願書に最初に添付した明細書の前記各記載によると、そこに記載された伸縮自在な門扉においては、

〔11〕 〈1〉 門扉を横方向に伸縮させる開閉操作、及び、〈2〉隣り合う縦長部材が接触する程度まで収縮させた門扉を回動させて間口全体を開放させる収納操作、の二操作をなすものであるということができる。

〔12〕 そして、右二操作をするに当たって、右枢支連結の部分においては、門扉のヒンジ6、6は、支柱に埋設された受具8、8に対して回動自在であることのみが要求され、それ以外に、受具8、8に対して上下に動く機能は求められていないというべきである。

〔13〕 また、本件考案の願書に最初に添付した図面の第1図、第2図に示された枢支連結の部分においては、ヒンジ6、6と受具8、8に対して枢支ピンが貫通した状態で嵌挿された構造が示されているだけであって、枢支ピンが挿抜自在であるという構成を読み取ることはできない。

〔14〕 そして、前掲甲第九号証によると、本件考案の願書に最初に添付した図面における第1図、第2図以外の図面にも、右構成についての記載はないことが認められる。

〔15〕 以上のとおりであるから、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面には、ヒンジと受具の両者を貫く状態で嵌挿された枢支ピンについて、ヒンジ及び受具に枢支連結して縦軸芯周りに回動自在となす機能を有することのみが示され、枢支ピンが挿抜自在となっていることに関しては、何も示されていないというべきである。

〔2〕 (2) 原告は、枢支ピンが挿抜自在なヒンジ部の形状は、昭和四八年実用新案出願公開第一一四五三九号公報(甲第四号証)と昭和四七年実用新案出願公開第一八三三二号公報(甲第五号証)にも記載されていて、この構造は広く知られていたところであると主張する(請求の原因四6)。

〔21〕 しかし、原告がこの主張の根拠として述べる右各公報の記載は、これらの公報に係る考案についての構成に関するものにすぎず、右各公報に、原告主張のような構成が記載されているからといって、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面に、枢支ピンが挿抜自在なヒンジ部の形状が記載されていたということはできない。

〔22〕 したがって、原告の右主張をもってしても、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載に関する前記認定を覆すものではない。原告の右主張は失当である。

〔3〕 (3) 原告はまた、門扉を、縦軸芯周りに回動自在に枢支連結する場合、受具とヒンジとの重なり部分に貫通孔を設け、頭付きピンを上方から貫通装着して用いることが古くから行われており、ピンが二つの部品に対して挿抜偉材に構成されて、分解掃除並びに補修が容易であるように、ピン継手が作られていることが、当業者の技術常識である旨主張する(請求の原因四8)。

〔31〕 しかしながら、原告主張の右の点が、当業者の技術常識であることを認めるに足りる証拠はない。

〔32〕 なお、原告主張の右の点が技術常識に属する事項でないとしても、少なくとも周知の技術に属する事項であったかもしれないが、この事項を明細書及び図面の記載から自明のものとして読み取ることができるかについては、発明の目的との関連においてこの点を判断するべきである。

〔33〕 この点についてみるに、まず前判示の本件考案の要旨によると、審決が認定しているように、本件考案は本件補正後において、「縦長部材側に固定されたヒンジと、受具の両者を貫く状態で挿抜自在に嵌挿された頭付きピンから成る枢支ピンとを介して、該枢支ピン軸芯周りで回動自在に枢支連結する」ことを必須不可欠の構成要件としていることが明らかである。

〔34〕 そして成立に争いのない甲第二号証(本件出願の公告公報)によると、本件補正後において本件考案は、前記2で判示した、本件補正前における目的のほか、「門扉の移動を案内するためのレール敷設工事を必要とせず、しかも極めて軽く円滑に開閉できる門扉を提供しようとする」(同公報第1欄第二四行ないし第二七行)ことを目的とし、

〔35〕 右要件により、「レールのない単なる床面で、キャスター車輪の走行跡や砂利、小石等の存在によって平坦な水平面上でキャスター車輪の転動が行われない場合でも、凹凸部に乗り上げたキャスター車輪の上下振動を門扉全体が吸収緩和することによりその旋回作動を円滑にすることができる」旨(同第五欄第二三行ないし第六欄第一一行)の作用効果を奏するものであることが認められる。

〔36〕 右にみた本件補正後における本件考案の目的等と、前記2で判示した、願書に最初に添付した明細書及び図面に示される本件考案の出願当初の目的等を対比し、前記(1)で判断したところを併せみると、たとえ、原告主張の点が当業者において周知の技術であったとしても、枢支ピンが挿抜自在なヒンジ部との構成が、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載から自明であったと認めることはできない。

〔六〕 6 まとめ

〔1〕 原告のその他の主張も、枢支ンがヒンジ、受具を貫いて挿抜く自在に嵌挿されるとの構成が、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載、から自明であったことを裏付けるものではなく、他に、右構成が右明細書及び図面から自明であったことを認めるに足りる証拠はない。

〔2〕 したがって、「本件補正により補正された明細書の登録請求の範囲には、『ヒンジ6並びに前記受具8の両者を貫く状態で挿抜自在に嵌挿された頭付きピンから成る枢支ピン19』なる構成が記載されているが、この点については、本件考案の願書に最初に添付された明細書及び図面には何ら記載されていず、また、そのような技術内容を示唆する記載もない。さらに、その点については、当時の技術水準からみても自明のことであるとは認められない。」として審決の認定、判断に誤りはないというべきである。

〔3〕 原告は、審決の右認定、判断及び「本件補正が明細書の要旨を変更するとする右判断は、被請求入が提出した、単なる頭付きピンがヒンジと受具を貫いている枢支構造を示している審判手続における乙第二号証をもってしても、左右することができない。」とした部分の判断は、本件考案の願書に最初に添付した図面に表されたヒンジの具体的構造について全く言及しなかったものであり、審判手続における乙第二号証(本訴における甲第四号証)についての理由を述べていないから、審決には審理不尽、理由不備の違法があると主張する。

〔31〕 しかし、審決の右認定、判断では、本件考案の願書に最初に添付した図面に本件考案の前記構成が記載されていないこと、及びこの構成を示唆する記載もないことが明確に述べられているから、この点において審決に原告主張のような違法はない。

〔32〕 また、審判手続における乙第二号証(本訴における甲第四号証)の公報の記載をもって、願書に最初に添付した明細書及び図面に本件考案の右構成が記載されていることを認めることができないことは前に判示したとおりであるから、「本件補正が明細書の要旨を変更するとする右判断は、…(中略)…審判手続における乙第二号証(本訴における甲第四号証)をもってしても、左右することができない。」とした審決の判断にも、原告が主張するような違法はないというべきである。

〔33〕 なお、原告は、審決が理由中において仮定的判断にとどめている点を非難しているが(請求の原因四の2の項)、当事者間に争いのない請求の原因三の事実(審決の理由の要点)によれば、原告が指摘するその理由の箇所は、「被請求人が主張するように、たとえ、…(中略)…としても、枢支ピンが(ヨ)挿抜自在に(タ)嵌挿された構成は、到底、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載されているということはできず、また、これらの記載からみて当業者にとって自明なものということができない。」としているのであって、原告の右主張は、その主張どおりであるとしても審決の結論に影響を及ぼすところのないものであるから、審決の取消事由としてはそれ自体理由のないものである。

〔4〕 そうすると、本件補正は、本件考案の願書に添付された明細書の要旨を変更するものと認められるとした審決の認定、判断に誤りはなく、審決には原告主張の審理不尽、理由不備の違法もないというべきであり、この認定、判断を前提として本件考案の進歩性を否定した審決の判断に誤りはなく、原告主張の審決取消事由はすべて理由がない。

第三 判決の違法理由

一、違法理由の第一点(審理不尽、理由不備の違法)

(一) 違法の事実

本判決において

(ⅰ)「ヒンジ6並びに受具8の両者を貫く状態で挿抜自在に嵌挿された頭付きピンから成る枢支ピン」

なる構成について、

(ⅱ)「本件考案の願書に添付された明細書及び図面には、そのような技術内容を示唆する記載がない旨」

を判決された点(判決第三一丁裏第五乃至第一〇行目の記載)

および

(ⅲ) 前記(ⅰ)項に記載の技術内容が、本件考案の出願日当時の技術水準から見て自明のことであるとは認められない旨」(判決第三四丁表三行目乃至第一〇行目の記載)

を判決された点に至る判決理由で審理不尽、理由不備の違法を犯されたものである。

(二) 前審における争点。

本判決の違法理由を明らかにする為に、先で、前審における争点を明らかにする。

原審判及び東京高等裁判所における原審において、本件考案における出願中の昭和五六年一月一四日付の手続補正、即ち、原審判の審決第三丁裏第四行目乃至第四丁表第一〇行目の記載に関係して述べると、

(ⅰ) 出願当初の明細書の実用新案登録請求の範囲には、「門扉の横側方一端の縦長部材をヒンジを介して支柱等の固定部に枢支連結して縦軸芯周りに回動自在になす」ことが記載されており、これにより、同明細書の考案の詳細な説明には、回動による操作によって門扉を小なるスペースでの収納がなし得ることが記載されているのに対して、

(ⅱ) 出願当初の明細書と、添付されていた図面とに表されていた構成とから

(ⅲ) 上記補正によって補正された明細書の実用新案登録請求の範囲には、出願当初の明細書の実用新案登録請求の範囲に比して「縦長部材側に固定されたヒンジと、受具の両者を貫く状態で挿抜自在に嵌挿された頭付きピンからなる枢支ピンとを介して、該収支ピン軸芯周りで回動自在に枢支連結する」なる構成が構成要件として追加され、これにより、同明細書の考案の詳細な説明及び図面には、「レールのない単なる床面でキャスター車輪の走行跡や砂利、小石等の存在によって平坦な水平面上でキャスター車輪の転動が行われない場合でも、凹凸部に乗り上げたキャスター車輪の上下振動を門扉全体が吸収緩和することによりその旋回作動を円滑にすることができる」ことが記載されていて、

(ⅳ) 上記手続補正で、「凹凸床面に対してキャスター車輪の上下振動が可能となり、円滑な旋回作動を可能にした門扉が提供できるようにする」ために、「枢支ピンが挿抜自在に嵌挿されている」構成にしたものである。

なる手続補正が、実用新案法第九条で準用される特許法第四一条に規定の

「要旨を変更しないもの」

であるか、この特許法第四一条の規定に違背して

「要旨を変更したもの」

であるかの点のみが、前審での争点として争われたものである。

(三) 本判決の審理不尽、理由不備の違法の理由。

1. 前記本判決の違法理由の第一点に対応する「本件審決部分の審理不尽、理由不備の違法」

(1) 本件審決が、右記載部分において審理不尽、理由不備の違法を犯したものであって、前審が、右本件審決の右違法部分を正当ずけるに足らず、本判決もまた、同様に審理不尽理由、不備の違法を犯しておられるので、先づ右本件審決の違法理由を次の(2)項以降で明らかにした後に、後記2.項で本判決の違法理由を明らかにする。

(2) 本件審決の審理不尽、理由不備の違法理由

以下に順を追って明らかにする。

(ⅰ) (本件最先図面の中のヒンジ構造が極めて特異な構造であつたこと)

(イ) 本件最先明細書と本件最先図面とのうちで、殊に前記本件最先図面に記載の構造から、本件補正後の挿抜自在の構成が、本件考案出願日当時の当業者の技術水準から読みとれるものであるとするところの前記本件最先図面の構成が、

「門扉のヒンジ部構造であって、ヒンジと受具とを貫通する頭付枢支ピンの下端が前記受具の下面より下方に垂下突出し放しのまま」(以下この構造を「枢支ピン下端貫通突出構造」と略称する。)

なる極めて特異な構造であったものである。

(ロ) 前記(イ)項に記した通り本考案出願日前に右構造が門扉のヒンジ構造として極めて特異な構造であったことが次の事情から明らかである。

本件考案出願日前には、

実公昭四三-二五、二六三号公報(昭和四三年一〇月二三日公告

甲第一二号証)

実公昭四六-二六、五〇三号公報(昭和四六年 九月一一日公告

甲第一三号証)

米国特許第三、六二一、五一二号明細書および図面

(昭和四六年一一月二三日特許公告、甲第一四号証)

など、枢支ピンがヒンジと受具との全体より下方に突出しないヒンジ構造が大部分を占める事情にあったものであり、

かつ、本件考案の出願日前には前記「枢支ピン下端貫通突出構造」は門扉のヒンジ構造として、ただに

(イ) 実開昭四八-一一四、五三九号公報(甲第四号証)

(本件審判において、乙第二号証として提出されていたものである。)

(ロ) 実開昭四七-一八、三三二号公報(甲第五号証)

のみが公知であって、これ以外には全く存在しなかったのである。

従って、門扉のヒンジ構造として前記「枢支ピン下端貫通突出構造」は本件考案出願日の時点において、極めて特異な構造であった。

(ⅱ) (出願日時点で当業者が読みとり得た事情。)

本件考案出願日時点において、当業者がその技術水準から、本件最先明細書および本件最先図面から、そのヒンジ構造部分について前記「枢支ピン下端貫通突出構造」を読みとることができる事情にあったものである。

何故ならば、次に述べる三つの理由が存したからである。

(a) (要旨変更の判断基準)

原審における原告昭和六二年九月一六日付第二回準備書面の第二項に略々記した通り

(イ) 特許庁編、発明協会発行、一般審査基準「明細書の要旨変更」

(甲第一〇号証)の第三頁、2.の(2)によれば

「記載した事項の範囲内」とは、一字一句同じことが記載されていることをいうのではなく、出願時において、その発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が補正前の明細書または図面ならびに、これらの両者の記載からみて自明な事項も上記「記載した事項の範囲内」とみる。

旨が規定されているとみるべきである。なに故ならば、特許法第四一条には、「明細書または図面」と規定されているので、右のとおりと解すべきものである。

(ロ) 前記(イ)項に記した理由と同一理由によって、同第四頁二行目乃至六行目に

『〔注〕

「補正前の明細書又は図面の記載からみて自明な事項」とはその事項自体を直接表現する記載はないが、補正前の明細書又は図面に記載されている技術内容を、出願の時点に於て当業者が客観的に判断すれば、その事項自体が記載してあったことに相当すると認められる事項をいう。』

と規定されていたとみるべきである。

(ハ) 特許法四一条は「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」と記されているものであるから同第五頁三行目乃至八行目に記載の内容は

『B 要旨変更とみないもの

補正前の明細書に記載がない事項を特許請求の範囲に補正した場合でも、その補正事項が、補正前の明細書又は図面に記載した事項からみて当業者にとって自明な事項であれば、特許請求の範囲に記載した技術的事項は、依然として補正前の明細書又は図面に「記載した事項の範囲内」のものであるから、そのような補正は要旨変更とはみない。』

と規定されたものと解するが至当なものである。

(ニ) 前記(ハ)項に記した理由と同じ理由によって、同第五頁末行乃至第六頁三行目に

『 なお、補正前の明細書又は図面からみて当業者に自明な事項を補正したときは、特許請求の範囲に記載した技術的事項は依然として補正前の明細書又は図面に「記載した事項の範囲内」のものであるから、そのような補正を要旨変更とみないことは勿論てある。』

と規定されているとみるが至当なものである。

以上の理由は特許庁編集昭和六一年五月三〇日財団法入発明協会発行の「工業所有権法逐条解説」(甲参考資料六)の第一二二頁

〔趣旨〕の項第二行目乃至第三行目の「補正は当初から明細書に記載していた範囲内の事項に限られる。」との記載と、同第七行目乃至第九行目の

「明細書または図面に記載した事項の範囲内に限ることとしたのは、明細書または図面のいずれかの個所に書いていた事項は、もともと特許出願の際に特許請求の範囲に記載して自己の権利の内容とすることができたものであるからである。」

なる記載とが、異なる内容を有するが、特許法第四一条の規定からみて前者が誤りであって、後者が正しいものであると見るべきだかがである。

以上を要するに、

「補正前の図面に記載されている技術内容を、出願の時点において、客観的に判断すればその事項自体が記載してあったことに相当すると、出願の時点における当業者が判断する内容」

は、要旨変更でない範囲内のものであると解されるものである。

この場合の判断基準は出願時点での当業者の技術水準による判断である。

従って、昭和五六年一月一四日付け手続補正書による補正が、実用新案法第九条により準用される特許法第四一条の要旨変更に該当するかどうかは、本件新案の最先明細書に添付されていた図面構造から、最先明細書の記載を勘案の上、当業者において理解され得る構造のうちに、

「ヒンジ6並びに受具8の両者を貫く状態で挿抜自在に嵌挿された頭付きピンからなる枢支ピン19」

なる構造が存在するかどうかにより決せられるべきものである。

(b) (本件最先図面に表されていた図形について)

本件最先図面の第二図には、次の図形が表されていたものである。

(イ) ヒンジ6と受具8とが上下に重なる部分の巾の中央位置の上に頭付ピンの頭が記され、前記頭付ピンに貫通される受具の中央位置の下に、前記頭付ピンの頭の横巾の約六五パーセントに相当する一辺をもつ小なる正方形に近い図が表わされている。

(ロ) 右の頭付ピンの頭および前記正方形に近い部分には、それ等の周面部分に、水平断面において、例えば多角柱のような、径の異なる部分が存在することを示す図が表わされていない。

(ハ) よって、前記(1)に記した部分は、いずれの個処にも水平断面形状が、円形であることを意味していると当業者においてみるのが最も一般的な解釈である。

(ニ) 前記(1)項に記された枢支連結部最下端位置の正方形に近く表された図形部分には、その表面にネジが表されているものではない。

またこれが、ナットではないと見るのが、当業者における最も一般的な解釈である。

(ホ) 受具8にもヒンジ6にも

「米国特許請求の範囲第三、六二一、五一二号明細書および図面

(一九七一年一一月二三日刊行、昭和四八年三月一一日特許庁資料館受入)(甲第一四号証)」

における第二図のロックピン68に相当する枢支軸落下防止用横ピンの設けられていることを表す図はない。

(ヘ) (原明細書の記載)

本件登録実用新案の最先明細書(甲第九号証)の第一頁九行目乃至一一行目には

〈1〉 「縦長部材2をヒンジ6、6を解して支柱等の固定部7に枢支連結して縦軸芯周りに回動自在になす」

と記され、第三頁一〇行目乃至一三行目に

〈2〉 「支持部材5に上下2個設けたヒンジ6、6を支柱に埋設の受具8、8に回動自在に枢支連結し、」

と記され、第六頁五行目乃至八行目に

〈3〉 「門扉1の横側方一端側の縦長部材2をヒンジ6、6を介して支柱等の固定部7に枢支連結して縦軸芯周りに回動自在になす」と記されていたのである。

(ト) (本件新案の出願時点における当業者の技術水準から見た見解)

〈1〉 門扉を回動自在に枢支連結するに、縦軸芯周りに回動自在になすには、一般的に蝶番を用いることが多かった。

〈2〉 従来一般に蝶番の軸芯には、ピン継手が用いられることが多かった。

〈3〉 右蝶番におけるピン継手は、

昭和四三年九月一五日技報堂発行「機械工学用語事典」(甲第一一号証)の第三八九頁一八行目乃至二七行目に示されているように、

「二つの部品の端部を重ね合せ、両者を通してあけた孔にピンを差込むことによって連結された部分をいう。多くの場合ピンを軸として相互に揺動することができる。」

なるものであった。

〈4〉 ピン継手は、右〈3〉項に記した二つの部品に対して、ピンが挿抜自在に構成されて分解掃除ならびに補修が容易であるように作られていることが多かったと見るが至当なものである。

右構造を用いるにあたっては、頭付ピンを挿抜自在に構成させることが、ヒンジ構造の分解掃除ならびに分解補修のために、当業者の常識である。

〈5〉 また当業者は、技術構造が、経済的であるために最も簡単な構造を用いるものである。

(チ) 本件最先明細書および本件最先図面自体が当業者に与える一般的な解釈が次のものであると見られる。

〈1〉 図面から見て、枢支ピン19をヒンジ6または受具8に叩き込んで地獄に固着するものとは考えられない。

なに故ならば、枢支ピン19の頂部が球面であるから、叩くと点接点で叩かれるから球面頂部に変形を生じるから商品として使い得るものではない。

又、分離修理や分解補修に不便であるから、従って、地獄に構成されているとみることは当業者の常識的構造ではない。

〈2〉 被上告人は原審において昭和六二年三月三日付被告(本上告における被上告人)が提出の第一回準備書面に添付の構造図(原審における別紙図面(6))を提出されたが右の第一図乃至第五図の構造は原審における昭和六二年九月二一日付原告提出第四回準備書面の第二頁乃至第四頁で記した通り、すべて本件最先図面の構造と全く異質な構造であって、本件考案出願日当時における当業者は本件最先図面の構造が前記別紙図面(6)の構造のものであるとは考えるものでない事が明らかである。

〈3〉 当業者は構造を、もっとも簡単てあり経済的であっで、かつ用いやすい素直な構造に解するとみるが常識的な理解である。

従って、本件最先図面を本件考案出願日時点の当業者が見ると頭付きピンが、むりやりに、ヒンジに固く地獄に固着する場合は枢支ピンの頭が不要であるからこの頭部分が不経済である。

前記頭付いピンを受具の孔に固く地獄に固着する場合は、受具より下方に垂下突出しているピン部分が不要であって、不経済である。

従って、本件最先図面の頭付き枢支ピン19の下端が受具から下方に突出している構造は、本件新案出願日時点の当業者が見ると「ヒンジ6並びに受具8の両者を貫く状態で挿抜自在に嵌挿された頭付きピンからなる枢支ピン19」

なる構造が記載してあった事に相当すると認めるものとみるが最も常識的な解釈である。

(c) (前記甲第四号証ならびに甲第五号証と、本件最先明細書および本件最先図面に表されていた考案とが、非常に密接な特殊な関係にあったこと。)

(イ) 前審での訴状第一八頁第九行目乃至一三行目の記載並びに同二一頁第七行目乃至第八行目に記載の通り、門扉のヒンジ構造であって、本件最先明細書および本件最先図面に表されていた前記特異な「枢支ピン下端貫通突出構造」と同じ「枢支ピン下端貫通突出構造」をもった数少ない公知構造であったところの甲第四号証(本件審判における乙第二号証)ならびに、甲第五号証の公開実用新案の考案対象物が共に、本件最先明細書および本件最先図面にかかる考案の対象的である「門扉」のヒンジ構造に関するものであり、

(ロ) 受具を貫ぬき通って受具より下方へ突出している部分の形状が両者で同一である。

(ハ) 本件考案の考案者も、甲第四号証、甲第五号証なる前記二つの公開公報の考案者も、隅田啓生氏なる同一人である

(ニ) 右二つの公知公報の出願人も、右本件考案の出願人も共に、河内アルミニウム工業株式会社なる同一人である。

(ホ) 前記二つの公開公報の分類(旧日本分類)が89(1)Eであって、本件考案の公告公報の分類即ち国際分類E06Bと実質同一の分類である。

(ヘ) 本件補正後の本件考案は、

「本件最先明細書および本件最先図面にかかる考案」に対して、そのヒンジ構造部分に前記「枢支ピン貫通状態挿抜自在の構造」を付加したものであって、本件最先明細書に記されていた考案目的を一層容易に実施しやすい態様に改良した改良考案の関係にあるものである。

即ち、本件考案は本件最先明細書に記載の考案の改良考案に相当するものである。

(ト) 本件考案出願日当時極めて特異な構造である前記「枢支ピン下端貫通突出構造」を有していた考案が本件最先明細書および本件最先図面にかかる考案と、前記甲第四号証と甲第五号証との考案のみであった事実、並びに既述の(a)項(b)項に記載の事実とを勘案すると、

本件考案出願日当時の当業者の技術水準からみて、本件最先明細書に支持される本件最先図面をみた場合に、この種門扉を取扱う当業者により解釈される構造が、前記本件考案出願日当時日本国内に広く頒布されていた甲第四号証、甲第五号証と同様な、本件考案に言う

「ヒンジと受具との両者を貫く状態で挿抜自在に嵌挿された頭付きピンの構造」

であると解するほかなかったものであると判断する事が最も常識的な妥当な解釈であったとみるほかないものである。

(ⅲ) (本件審判における審理不尽、理由不備の違法理由)

既述の次第であるから、本件補正が実用新案法第九条で準用される特許法第四一条にかかる要旨変更であるかどうかを検するには、少なくとも本件最先図面に表されていた

『前記の極めて特異な「枢支ピン下端貫通突出構造」』

についてこれがいかなる構造であり、本件考案出願日時点で、当業者がこれをいかに解するかを検しないかぎり要旨変更であるかどうかを決定することができなかったものである。

しかるところ、本件審決はその第三丁表第六行目乃至第一八行目の審理において、前記本件最先図面の構造がいかなるものであるかを全く審理されていない。

又、本件審決は本件考案の出願日時点における当業者の技術水準を検するためには、乙第二号証(前審における甲第四号証)に表されていた技術がいかなるものであるかを検しないかぎり右技術水準を理解し得ないにかがわらず、本件審決はその第四丁裏冒頭五行において

「上記補正が明細書の要旨を変更するとする当合議体の判断は、被請求人が提出した、単なる頭付きピンがヒンジと受具を貫いている枢支構造を示している乙第2号証をもってしても左右することができない。」

と審決するだけである。

即ち、本件審決は

「単なる」

なる語を冒頭に用いて、この本件審決は

「頭付きピンがヒンジと受具とを貫いている枢支構造」

であるとのみ、その外観を見るのみであって、この構造の頭付き枢支ピンの側面部が二重点線で表されることによって、この枢支ピンが挿抜自在に貫通突出させた構造であることを全く看過したものである。

この乙第二号証(原審における甲第四号証)に記載の事実がいかなるものであるかを十分に審理していない。

即ち、本件審決において前記乙第二号証(原審の甲第四号証)が当業者にいかなる判断力を付し、これが本件出願当初の技術水準をいかに変更させていたかを全く審理しなかったものである。

したがって、本件審決がいかなる慰留によってその結論に判断されるに至ったかの理由を全く合理的に理解することができない。

故に本件審決は右の点において審理不尽、理由不備の違法をおかしたものである事があきらかである。

2. (本判決が審理不尽、理由不備の違法をおかしたものである理由)

(1) 本判決は前記第二、の二、の〔五〕の〔13〕項に記した通り

「また、本件考案の願書に最初に添付した図面の第1図、第2図に示された枢支連結の部分においては、ヒンジ6、6と受具8、8に対して枢支ピンが貫通した状態で嵌挿された構造が示されているだけであって、」(本判決第三一丁表末尾三行の記載)

と記されている通り前記1.の(2)の(ⅲ)項に記した理由と全く同一の理由で審理不尽、理由不備の違法をおかしたものである。かかる次第により、本判決第三一丁表末行乃至同裏第一行目に記載の通り

「読み取ることはできない」

なる誤った判決がなされたものである。本判決第三一丁裏第五行目乃至第一〇行目の記載は、「以上のとおりであるから」なる接続詞で始まり、前記誤った判決判断を受けつぐものであるから、前記判決部分はこれまた、誤った判決であるにすぎない。

(2) 本判決第三一丁裏末行乃至第三二丁第一〇行目の記載は、既述の通り極めて特異な前記技術を有するものであるから、本件考案出願日前

の当業者の判断技術水準に影響を与えていたものである。

(3) 即ち、前記第三、の一の(三)の1.の(2)の(ⅱ)の(a)項に記載の通り、要旨変更であるかどうかの判断基準が、本件考案出願日時点の当業者の技術水準判断により変わるものであって、

本判決は右当業者の技術水準が本件考案の構成と同様に極めて特異な前記「枢支ピン下端貫通突出構造」を持った前記甲第四号証の公知技術によって影響されることを全く看過したものである。

従って、本判決第三二丁表第八行目乃至第一〇行目に記載の判決部分は前記理由により重要な判断を誤ったものである。

(4) 本判決第三二丁裏末尾二行には

「証拠はない」

と判決しておられるがこの判決は誤りである。

例えば甲第一四号証に示す扉ヒンジ構造は本件公報(甲第二号証)の第一欄三〇行目乃至一二四行目に記載の文言を用いれば

「 ヒンジ6と、

該ヒンジ並びに前記受具の両者に挿抜自在に嵌挿にされた頭付きピンからなる枢支ピン19と

を介して、該枢支ピン19軸芯周りで回動自在に枢支連結した構造」であって、説明書第二欄第六一行目に記載のロックピン68が蝶番部36から枢支ピン40の脱落を防止するものである。

故にピンが二つの部品に対して挿抜自在に構成される技術が存したことの証拠が存したことが明らかである。

(5) まとめ

以上の理由によって本判決が、本件最先図面について要旨変更があったとする審決結論に達する審理並びに理由が全く明らかでないので、本判決はいかなる理由で結論がみちびかれたか不明である。

故に本判決は右点について審理不尽、理由不備の違法を犯したものであって取消をまぬがれないものである。

二、違法理由の第二点。(実用新案法第九条により準用される特許法第四一条についての法令違反)

(一) 違法の事実

本判決がその三三丁表冒頭五行において

「要旨変更であるかどうかの判断は、

発明の目的との関連においてこの点を判断すべきである。」

なる旨を判示し、次に

本判決はその第三丁表第三行目乃至第一〇行目において、

「 右にみた本件補正後における本件考案の目的等と、

前記2で判示した、願書に最初に添付した明細書及び図面に示される本件考案の出願当初の目的等を

対比し、

前記(1)で判断したところを併せみると、

たとえ、原告主張の点が当業者において周知の技術であったとしても、枢支ピンが挿抜自在なヒンジ部との構成が、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載から自明であったと

認めることはできない。」

と判決しているが、要するに、この判決内容は本件補正の前後における考案目的が異なることを理由に要旨を変更したものであると判決したものであるから、右判決の点で、本判決は、

実用新案法第九条で準用される特許法第四一条を正当に適用しないことによる法令違背の違法を犯したもので、判決の結論を誤らせるに至ったものであるから、

本判決は法令違背の違法により取消を免れないものである。

(二) 違法の理由

1. 実用新案法第九条で準用される特許法第四一条の規定は

「出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前の手続補正を前堤として」

「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更する補正は、明細書の要旨を変更しないものとみなす。」

なるものであり、前記工業所有権法逐条解説昭和六一年五月三〇日改訂増補8版3刷発行の第一二二頁の〔趣旨〕の項第七行目乃至第九行目には、既述の通り

「明細書または図面に記載した事項の範囲内に限ることとしたのは、明細書または図面のいずれかの個所に書いていた事項は、もともと特許出願の際に特許請求の範囲に記載して自己の権利の内容とすることができたものであるからである。」

と記されていたものである。

即ち、この特許法第四一条の規定は願書に最初に添付した図面にのみ表されている事項、又は、前記第三の1.の(2)の(ⅱ)の(a)項に記載の通り

「補正前の明細書の記載からみて自明な事項」

即ち

「その事項自体を直接表現する記載はないが、補正前の明細書に記載されている技術内容を、出願の時点に於いて当業者が客観的に判断すれば、その事項自体が記載してあったことに相当すると認められる事項」

を手続補正の対象とする事を許すことを示すものである。

2. 右の規定は願書添付の最先明細書には記されていないが、右願書に最初に添付の図面にのみ表されている事項、もしくはこれより解することのできる事項をも、手続補正の対象として許されることを示すものである。

右は、特許又は実用新案の明細書が一般の機械構造説明書とは異なり、出願の時点において特許、実用新案の登録の対象となる発明、考案部分についての説明が、必要最小限の記載事項として書かれることを予定したものと見るが至当なものである。

かかる場合には、前記図面の構造に発明又は考案が化体して表されながら、特許、実用新案の登録対象となる発明、考案でない部分の構造ならびにこの構造が有する機能でありながら、特許、実用新案の登録の対象に直接に関係がないが故に最先明細書の文言に記されていないことが存することを示すものである。

3. この特許法第四一条は右に示したところの「明細書に文言をもって表されていない機能又は発明考案」をも手続補正の対象として許すものである。

かかる場合は、合法に手続補正された後の明細書に記載された考案の目的は、前記最先明細書に記載の目的構成効果との間に差を生ずることは当然のことである。

本件考案における本件補正は右3.項に記した場合に該当するものである。

4. 即ち本件考案では、本件最先明細書に表されていた考案の構成に、本件最先図面に化体させていた「頭付き枢支ピンをヒンジと受具に対して貫く状態で挿抜自在に嵌挿させる構成」を付加することによって、門扉の開閉を一層容易なものとした改良考案としたものである。

従って、本件補正後における本件考案の目的には本件最先明細書に記載の考案の目的効果に存しなかったところの「一層容易に門扉を開閉させ得る目的効果」が付加されて許されることは当然のことである。

5. 前記の通り本判決三三丁表第三行目乃至第六行目において

「明細書及び図面の記載から自明のものとして読み取ることができるかについては、発明の目的との関連においてこの点を判断するべきである。」と記しているが、この本審決全体から解されるこの意味は手続補正の前後において考案の目的効果において共通性がなければならないとするものであるから、本判決は既述の理由によって、特許法第四一条の趣旨に反するものであるから本判決は特許法第四一条について法令違背がある。

6. 前記5.項に記したことが正しいものである事が本判決の次の記載から明らかである。

即ち、本判決第二五丁裏第二行目乃至第五行目に記された

「本件考案の願書に最初に添付した明細書に記載された考案においては、門扉のヒンジ部における枢支ピンが、受具とヒンジに対し挿抜自在に嵌挿された構造を採用することに関する目的はなかったというべきである。」なる本判決は特許法第四一条の解釈適用を誤った違法なものである。

なに故ならば、本件最先明細書に記された考案は本判決第二七丁裏第四行目乃至第二九丁表第九行目に記載の作用効果を有するものであると記きれ、前記本判決二五丁裏部分においても本件最先明細書の考案には

「門扉のヒンジ部における枢支ピンが、受具とヒンジに対し挿抜自在に嵌挿された構造を採用することに関する目的はなかったというべきである。」と述べているが、本件最先明細書には扉の開閉移動に円滑さを有せしめる思想の文言記載がなくて、枢支ピンの挿抜自在の構成を必須要件としなかったことに対し、手続補正後の本件考案は本件最先図面で自明であった枢支ピン挿抜自在嵌挿の構造を請求範囲に採用し、本件最先図面の特異な構成に内在する機能で門扉の開閉を容易なものに改良し得る効果を明細書に文言で表すに至ったものであるから補正前後の両者考案に記された目的に差が存することは、出願人が必須構成要件をどこまでに特定するかの自由選択によって変わるものであるから、手続補正の前後における考案目的に差が存するが故に、この差の故に手続補正が要旨変更であるとする本件判決は特許法第四一条の解釈適用を誤ったものであることが明らかである。

7. 本判決第二六丁表第八行目乃至第二七丁表三行目の記載は本件最先明細書には

「接地キャスターが、上下にも移動することが自在であることは示されていないというべきである。また、門扉が設けられる地面が水平であるか否かについての記載は、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面に存在しないことが、前掲甲第九号証によって認められる。したがって、原告が主張するように、地面を正しく水平面に仕上げることは困難であり、高価なものとなるとしても、そのことをもって、右明細書及び図面に、接地キャスターが門扉操作中に上下に動くことが可能でなければならないという目的が示されていたとする根拠とすることはできない。」と記され、この最先明細書中で、

「接地キャスターが上下に移動自在であることが文言で積極的に記されていないことが認められる。

本判決はこの事を理由に本件最先明細書および本件最先図面には接地キャスターが門扉操作中に上下に動くことが可能でなければならないという目的が示されていたとする根拠とすることはできない。」

という消極的且つ否定的なものである。

然し最先明細書中のこの記載部分には、キャスターが接地しているので、このキャスターへの地面からの押上力を前記第三.の一項に記した図面の特異な構成で吸収させるニーズが内在していたことが寧ろ解される。

従って本件補正は、目的的に無理のない補正である。

本件考案が手続補正により許されることは、本件最先図面に頭付き枢支ピンがヒンジと受具とに挿抜自在に貫挿されている構成が現されていたとみるが至当なる事をもって成立したものである。

要するに、本件最先図面に表されていたに等しいと認められる構成であって、本件最先明細書に記されている文言に対して不合理な部分がない事をもって本判決とは寧ろ逆に、本判決三三丁表第四乃至第五行目に言うところの

「発明の目的との関連において」

要旨変更でないと判断されるべきものである。

即ち、手続補正は最先明細書に文言で記されていた考案の範囲内でのみ許されることを規定しているものではない。

冒頭に記した違法の事実の項に記載の判決部分は、自明であったかどうかを検する為の一方の比較対象として揚げる

「右に見た本件補正後における本件考案の目的等」

なるものは、「等」の字を含んでいるが、この該当部分には実質的には本件補正後における本件考案の目的のみが示されているにすぎない。

次に第三四丁表第四行目乃至第五行目で自明かどうかを検する為の他方の比較対象として

「2で判示した、願書に最初に添付した明細書及び図面に示される本件考案の出願当初の目的等」

と記されているが、この部分にも実質的にも本件最先明細書に文言で記された考案目的が記されているにすぎない。

然して本判決は前記両目的が異なるものであることを理由に、

「枢支ピンが挿抜自在にヒンジ部に貫挿した構成が、本件考案の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載から自明であったと認めることはできない。」

と判決されたものと見るほかない。

別言を持って記すと本判決は

手続補正の前後における「文言で記されている考案目的」が同一でなければ補正部分が自明であったと認めることはできない。

とするものであって、実用新案法第九条により準用される特許法第四一条につき法令違背なる違法に該当するものであり、前記第三の一項で記した通り本件手続補正は要旨を変更するものでなく、許されるべきものであったから本判決は結論において誤るに至ったものであって、要するに、本判決は違法理由の第一点の理由により審理不尽、理由不備の違法があり、前記違法理由の第二点の理由により法令違背により判決結果を誤ったものであるから取消を免れないものである。

以上

(添付書類省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例